【奄美大島】世界三大織物にも数えられる大島紬とは?大島紬の特徴や奄美大島の伝統産業を体験できる人気のツアーもご紹介
目次
世界三大織物にも数えられる大島紬とは?
みなさまは大島紬について、その名前を耳にされたことはあるでしょうか。大島紬とは奄美大島の特産品であり、世界三大織物として国内に留まらず、海外からも高い評価を得ています。
日本でも有数の観光地である奄美大島といえば、その海をはじめとする自然の美しさや、海に囲まれた島ならではの食べ物などに魅力を感じる方が多いのではないでしょうか。
しかし、奄美大島の魅力はそれだけではなく、薩摩と沖縄双方の影響が入り混じった特有の風土に育まれた多様な文化も忘れてはなりません。その中でも特筆すべきものの一つとして挙げられるのが、大島紬です。
紬(つむぎ)とは?
大島紬について知るためには、まず紬というものについて知っておく必要があります。
紬とは織物の種類であり、蚕の繭から作られた絹糸を表面に使用していることが特徴です。そうすることで、絹糸特有のツヤのある光沢感が活かされ、高級感のある風合いが生まれることで知られています。また、糸の段階で染色を行う先染めという手法が用いられているのも紬の特徴です。
染めにも手間と技術が必要となる上、既に染められている糸を織っていく作業には極めて繊細な作業が求められるため、紬の製作には多大なコストがかかります。
美しいだけでなく耐久性にも優れた織物が出来上がることから、日常着や作業着としても昔から広く愛されてきました。
大島紬の特徴
いくつかの種類が存在する紬の中でも、大島紬は特に多くの手間をかけて製作されることで知られています。
大島紬は伝統的な泥染めによって染色が行われており、染料に浸した糸を泥田に浸し、揉むことで色を定着させるという独特の手法が用いられてきました。泥田に浸すと聞くと荒々しい織物を想像される方もいらっしゃるかもしれませんが、完成品の大島紬は極めて繊細で美しい色合い、かつ頑丈な風合いで仕上げられています。
着た時にシワになりにくいという性質も持っており、軽い肌触りのため着飾る時はもちろん、柄を選べばさまざまなシチュエーションで着用していくことができるでしょう。
大島紬1着が完成するまでには、半年から1年ほどの期間が必要であり、極めて価値の高い存在となっています。
自然が作り出す独特な色
大島紬の染めについて、もう少し詳しく見てみましょう。
大島紬はその染料に、テーチ木と呼ばれる植物を用いているのが特徴です。この植物は、和名では車輪梅(シャリンバイ)と呼ばれ、宮城・山形県以南から九州、沖縄までの地域でも海岸沿いを中心に目にすることができます。植物そのものはそれほど珍しいものではなく、奄美では道端や軒先などに数多く自生している姿を見ることができるでしょう。
大島紬の色は、手間のかかる工程を経てテーチ木の色を丁寧に抽出することで生み出されています。採取した木材をチップ状に砕き、長時間かけて煮出し、寝かせることで染料を作っているのです。このテーチ木由来の染料を糸につけ、それをさらに泥田に漬けると、奄美の泥土が含んでいる鉄分との反応によって奥行きのある黒、またはこげ茶色にも見える色に糸が染まります。
他の織物には見られない有機的で複雑な色彩は、大島紬の大きな魅力の一つだと言えるでしょう。
絣(かすり)加工
大島紬の紋様は、絣と呼ばれる加工によって織られています。絣とは、あらかじめ染め分けた経糸と緯糸を用い、これを設計に基づいた細やかな作業で正確に織り成すという加工で、これによって、大島紬の美麗な紋様が生み出されているのです。
絣加工の技術は元々インドで開発されたもので、タイ、カンボジア、インドネシア、ベトナムなどを経由しつつ、日本へと入ってきました。
奄美大島には多彩な絣加工の技術が根付いており、さまざまな手法を用いた大島紬が製作されています。
軽くてしわになりにくい
着物に対して重たいという印象を持たれている方も多いかもしれませんが、大島紬は一反(約12.5m)につき、450g程度の重量しかありません。450gといえば500mlのペットボトルよりも軽量であり、これは着物に用いられる反物の中でもかなり軽い部類です。
もちろん実際に着物として仕立てられる際には裏地なども取りつけられるため重量は変わってきますが、あまり重さを感じることなく気軽に着用できるでしょう。
また、仕立ての良さからスルスルとした独特の手触りが実現されており、転じてシワになりにくいという性質も持っています。
細かな所作を気にすることなく着用できるため、日常的な存在として親しんでいくことができるでしょう。
着くずれしにくい
シワになりにくい性質と合せて、ハリのある良好な状態に仕立てられている大島紬は着崩れしにくいという長所も持ち合わせています。
着物は着付けが大変な衣服であり、もし着用しても着崩れてしまったときに自分で上手く直せるか自信がないと敬遠される方も多いのではないでしょうか。しかし、大島紬はその上質さから着崩れしにくいため、一度正しい着付けさえしてしまえば安心して着用していけるでしょう。
日常着としても利用されていたのが納得なほど、着心地が良く、利便性の高い織物となっています。
大島紬の歴史
大島紬に対する理解をより深めるために、この織物の歴史を紐解いてみましょう。
歴史書に大島紬に関する記述が初めて登場するのは奈良時代のことで、東大寺正倉院の書物に南の島から褐色の紬が献上されたという文章が残されています。これが大島紬の原型だと見られており、少なくとも奈良時代には既に紬の技術が確立されていたことがわかります。
現在の大島紬により近い製法が取られるようになったのは1716年と考えられていて、ここを境に真綿の紬糸をテーチ木と泥田で染めるという手法が取られるようになりました。
大島紬が広く製造され、商品として流通するようになったのはそこから時代が大きく開き、明治時代に入ってからのことです。明治初期から中期にかけて知名度が向上していき、需要の増加に伴い真綿から練玉糸へと使われる糸が変化しました。
そして、大正中期に本絹練糸が使用されるようになり、現代の大島紬にも見られる潤沢な光沢を帯びるようになったと言われています。
大正から昭和にかけて泥藍大島、色大島、草木染大島といった種類も増えていき、現代では2020年を境に「テキスタイル」という製品の流通も始まっています。これは、大島紬の泥染めなどの製法を応用することで洋服を作ったり、ネクタイやカバン、その他小物などを作ったりしたもので、より日常的に大島紬を取り入れられるようになりました。
大島紬の発展はこれに留まることなく、今後もその優れた品質を活かし、より大島紬を広く流通させていくことが目指されています。
大島紬の制作工程とは?
続いて、大島紬の製作工程を大まかに追ってみましょう。
大島紬を作るためには、まず詳細な図案の製作が行われます。最初にデザインの原図が作成され、それを元にして使用する糸の密度などが詳細に検討された、織物用の図案を作成しなければなりません。
続いては、経糸の長さや本数を整え、製作中のもつれや順番間違いといった不備を防ぐための整経という作業が行われます。
大島紬は1着を作成するために数ヶ月以上の時間を要するものであり、製作中のミスが起きないように万全に備えておく必要があるのです。
整経を終えて糸がまとまったら、海藻を利用したイギスというものを用いて糊付けを行っていきます。イギスは糸をまとめるだけでなく、防虫作用や伸縮性の強化、艶出しなど、さまざまな効果を兼ね備えている優れものです。
そして、糸束の乾燥が終わると、図案に沿って糸を締めていきます。この作業は絣締めと呼ばれていて、大島紬特有の締め木が利用され、強い力をかけながら糸を固く織り込んでいくのが特徴です。
ここでようやくテーチ木の染料が登場し、糸を30回以上に分けて染めつつ泥田で揉み込んでいきます。
手間暇をかけた染色の工程が済んだら、続いて糸の加工が行われていきます。織締めをしている綿糸を切ると絣が露出し、絣を合わせながら糸を設計通りに織り込んでいくことで、大島紬の柄が織り成されていくのです。
しかし、織機の工程に入ってもまだまだ細かな作業が残っています。数センチを織るごとに手を止め、絣のズレを確認しつつ、それを適宜手縫いで修正していかなければなりません。この絣調整と呼ばれる作業が挟まってくるため、大島紬の織作業は一日に10センチ程度しか進めることができません。
これらの気の遠くなりそうな細やかな作業によって、私たちの手元へ美しい大島紬が届けられているのです。数ヶ月から1年ほどの期間を費やし、ようやく完成した大島紬は、本場奄美大島紬協同組合による24項目の検品を受けた上、これに合格した後にようやく流通していくのです。
奄美大島の伝統産業を体験できる人気のツアー
ここまでの説明で、大島紬の希少性とその価値は理解していただけたのではないでしょうか。奄美大島に根付いた文化の一部である大島紬に触れれば、より土地を深く知り、味わうことができるでしょう。
大島紬は高級品なため、気軽に購入することは難しいかもしれません。しかし、大島紬の伝統産業を体験できるツアーが奄美大島では開催されているため、文化としての大島紬はどなたでも気軽に楽しむことが可能です。
以下に大島紬と関連するツアーを3つピックアップいたしましたので、順にチェックしていきましょう。
着付け体験
大島紬は着物ですから、せっかくなら袖を通してみたいと思われる方が多いのではないでしょうか。奄美大島ではそんな希望を叶えてくれる、お手軽な着付け体験が開催されています。
一から完璧に着付けを行うと時間がかかってしまうため、旅行中に時間を使って体験していいものかと迷われる方も多いかもしれません。しかし、着付け体験では洋服の上から簡単に着る体験をさせてもらえるため、想像以上に気軽に試してみることが可能です。
また、男性用やお子様用の着物も用意されているため、カップルやファミリーでのご旅行にもピッタリですよ。
はた織り体験
続いて、大島紬を作成するための要である織機を使ったはた織り体験をご紹介させていただきます。
はた織りと聞くと器用でなければできないように思われるかもしれませんが、奄美大島での体験では簡単な織機を使用するため技術的な心配はいりません。ただ織るだけの体験ではなく、自分で織った布はストールなどに使用できる上品な一枚の反物として持ち帰ることが可能です。
体験だけでなく思い出に残るお土産を手にすることもできる、非常にオススメ度の高い体験となっています。
泥染・藍染体験
大島紬のもう一つの特徴として挙げられる染色の工程も、奄美大島では体験することができます。
泥染めでは泥田に使って行う工程をしっかりと体験することができるため、文化的な知識を得られるというだけでなく、イベント的な楽しさもたっぷりです。お子様連れのご家族からの評判もとても良く、レジャー的な楽しみ方もできる体験となっています。
ただし、体験の内容上、高確率で衣服が汚れてしまう点に注意が必要です。こちらの体験に参加する際には、必ず汚れても良い格好で行くようにしてくださいね。
着付け体験や泥染体験を楽しめる奄美大島の観光スポット
ここまでにご紹介させていただいた体験を楽しめるスポットは、奄美大島の中のあちこちに点在しています。そんな中でも特に体験に参加しやすいおすすめスポットを、以下に2つ選出させていただきました。
どちらも観光中に気軽に訪れやすいスポットですので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。
夢おりの郷
「夢おりの郷」は、大島紬の織元によって運営されている、大島紬という文化にさまざまな方向性から触れられるのが魅力のテーマパークです。大島紬について図案、染色、はた織、製品と、その多彩な魅力を余すところなく眺めることができます。
施設の特徴
こちらの施設には紬工房が併設されており、実際に製作を行っている職人さんともお話をさせていただくことができます。作業を行っている様子を自由に見学することができ、希望者はたった300円で工程を案内してもらうこともできるのが嬉しいところ。
体験については上でご紹介した3つの体験をいずれも楽しむことができ、最高に充実した時間を過ごせること請け合いです。
また、大島紬の展示販売やお求めやすいお土産品の販売も行われていますので、ぜひ足を運ばれてみてはいかがでしょうか。
基本情報
夢おりの郷の営業時間は9:30~17:00、木曜日のみ定休日となっています。入場は無料で、駐車場も15台分が用意されており、その訪れやすさも大きな魅力です。
住所は〒894-0105 鹿児島県大島郡龍郷町大勝3213-1となっています。
大島紬村
もう一ヵ所ご紹介させていただく「大島紬村」も、大島紬の織元によって運営されている大島紬の観光庭園です。こちらは夢おりの郷と比べて500円の入場料が必要となりますが、観光という観点ではより充実したスポットだと言えるかもしれません。
施設の特徴
施設内に上で大島紬の製造所があり、ご紹介させていただいた各種体験ができるという点については、夢おりの郷と似た施設となっています。
こちらの大きな特徴としては、約1万5千坪という広大な敷地に施設が設けられており、施設内に亜熱帯植物庭園があるという点が挙げられるでしょう。ブーゲンビリアやソテツ、ヒカゲヘゴなど南国を感じさせてくれる植物の数々が生い茂った中でも文化体験は、奄美大島の魅力を大いに感じさせてくれること請け合いです。
ぜひ奄美大島の風土を味わいながら大島紬に触れて、歴史に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
基本情報
大島紬村の営業時間は9:00~17:00、大晦日と元旦だけが定休日となっています。入園料は大人が500円、小中学生が200円ですが、ショッピングのみのご利用には料金はかかりません。
駐車場は20台分用意されているため、レンタカーなどで訪れやすいスポットとなっています。
住所は〒894-0411 鹿児島県大島郡龍郷町赤尾木1945です。
まとめ
今回は奄美大島の伝統文化、大島紬に関するさまざまな情報をお届けさせていただきました。着物に関心がある方はもちろん、それ以外の方でも実物を目にすれば、きっと心を奪われてしまうことでしょう。
ぜひ奄美大島を巡る旅のプランに、大島紬に触れるひと時を盛り込まれてみてはいかがでしょうか。
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